【講座報告】連続講座青少年の居場所づくり講座 テーマ研修①
2013年9月6日に【連続講座:青少年の居場所づくり】がスタートしました。
今回は、テーマ研修①のご報告です。
◆ ◇ ◆ テーマ研修①「青少年に関わる“わたしの役割”」 ◆ ◇ ◆
桜木町の野毛にある「横浜市青少年交流センター」はかつて「横浜市勤労青少年センター」という働く若者の余暇施設でしたが、平成14年12月からは青少年の居場所として現在の施設がリニューアルオープンしました。オープン当初は社団法人横浜ボランティア協会が運営を担い、指定管理者制度導入後の現在も、ボランティア協会の後身である公益財団法人よこはまユースが運営しています。
松田利恵さんは、オープンした当時から10年間、交流センターのコーディネーターとして活躍された方です。今回のテーマ研修では、松田さんにこれまでどのように子どもたちに対応し、子どもたちの成長を支えてきたのか、をお話していただきました。
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以下、松田利恵さんのお話です。
- 【オープン当時のこと】
最初は、桜木町の横浜市市民活動支援センターのスタッフとして入りましたが、交流センターがオープンしたと同時に異動となりました。私自身、青少年育成については全くの素人でした。当時の館長からは「路地裏で子供たちを見守るおばさん役をやってくれればいい。」と言われましたが、不安で一杯でした。
オープン当初、子どもたちはあまり来なかったのですが、ある日「特攻服」を着て鎖をジャラジャラ首から下げた中学生がセンターに入ってきた時は声がでないぐらい驚きました。職員からは来た子どもたちにはなるべく声をかけてほしいと言われていたので、勇気を振り絞ってその中学生たちに「そのネックレス、どこで買ったの?」と恐る恐る聞いてみると、中学生はにっこりと笑って「これ、伊勢佐木町で買ったんだよ。おばちゃんも欲しかったら、買ってきてあげるよ。」という返事が返ってきました。その笑った時の顔がとても可愛らしくて今でも忘れることができません。
でもフリースペースでは、ボールは蹴る、花火はする、自動販売機の上に乗るなど、中学生たちは本当に無茶苦茶なことをやっていました。
そんな中学生でも、学校を卒業するとちょっと落ち着いてきます。交流センターの駐車場の壁をセンターのスタッフがペンキを塗っていたところに、かつて中学時代にセンターでさんざんやんちゃをしていた若者が久しぶりに来てくれました。彼は中学を卒業した後、塗装屋に就職しました。彼曰く「こんな塗り方じゃだめだよ。今度俺が塗ってやるよ。」と言って休みの日に仲間を呼んで、きれいに駐車場の壁を塗ってくれました。現在は独立して塗装屋の社長として活躍しているようです。
交流センターには、ことあるごとにかつてセンターを利用していた若者たちが成長した姿を見せてくれます。そして必ずセンターに来て「懐かしい!」って言ってくれるんです。それを聞くたびに「この仕事をしてよかった」とつくづく感じます。中には結婚式にわざわざ招待してくれる若者もいます。
夏休みになると、かつてセンターに通ってきた若者が突然顔を出してくれる時があって、そういう時は本当にうれしいですね。
- 【青少年とかかわることで大切にしていること】
私の場合は、まず笑顔で子どもたちに対応することを心がけています。子どもから声をかけてもらえるようにするためには、やはり笑顔が大事だと思います。それと相手を詮索するような言い方は控えるようにしています。センターに来る子どもの中には母親がいない子どももいるので、「お母さんは…」といった形で、家族のことを詳しく聞くことはしません。また、センターは公共の施設なので、どんな悪いことをしても、「もう2度と来るな!」といった子どもを排除することは言いません。勿論、悪いことをした場合は「そんな悪いことをすると、あなたにとってとても損になるわよ」といったようなことは言います。
ある日、2階の自動販売機の前で小学生の女の子が泣いているという知らせを聞いて駆け付けたところ、中学生5、6人が小学生の女の子を取り囲んでいました。何が起きているのか、どうなるのか、黙って見ていたところ、最終的には中学1年生の男の子が起きたトラブルをうまく裁いてくれました。
自分としては何もしなくて良かったと感じるとともに、「子どもたちとの接し方に正解はないな」と思いました。
私も開館以来10年間センターで働いています。お蔭で余裕をもって子どもたちに接することができます。また、子どもたちの成長を短い時間で捉えるのではなく、長く見守ることができるようになりました。
- 【最後に】
子どもの家庭環境は、10年前と比べてかなり厳しくなったように思います。かつて中学を卒業すると男の子はバイクに興味を持ちますが、今は卒業しても全く興味を示しません。昔と比べると、今の中学生はちょっと幼い感じがします。先ほど、無反応な子どもや無気力のように見える子どもにどう対応しますか?というご質問をいただきましたが、私は相手に嫌がられてもひたすら話かけます。しつこく声をかけていきます。
私がセンターでしょぼんとしていたりしていると、時々「おばちゃん、どうしたの?元気だしなよ!」子どもたちに逆に励まされることがあります。10年間、センターにいられたのは多くの子どもたちに支えてもらったからだと思います。また、仲間のコーディネーターと一緒に勉強したり、全国のさまざまな青少年施設にお邪魔して、いろんなことを学べる機会があったからだと思います。
*以上の文章は、平成25年9月20日(金)に横浜市青少年交流センターで松田利恵さんが話された内容を要約したものです>
★次回は、特別講義を挟んで大田区の実践者、さかいさんのお話を当センターにて伺います。
外の風も空もすっかり秋です。みなさんお体にお気をつけください。