講座「食から読み解く思春期のこころ~孤食化、個食化する子どもたち~」報告②【育成C】
実施日:9月7日(金)10:00~12:00
講 師:森政 淳子 氏(鎌倉女子大学家政学部管理栄養学科 教授)
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報告①の最後でも触れましたが、後半の講義では、子どもが描いた食事風景画を見ながら、食事形態が子どもの心とどのように関わっているかについてお話しいただきました。
著作権の関係上、講義の中で紹介した絵を掲載できないことが残念ですが、それぞれの絵と食事の様子を想像しながら読んでいただければと思います。
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2.食事風景画から読み取れる子どもの思い
食事風景画①
母親が調理をし、その背後で子どもが食事をしており、二人は背中合わせになっている。二人とも楽しそうな顔ではない。
食事風景画②
全ての料理に「一人用」と書き込まれており、本人も悲しそうな顔をしている。
食事風景画③
母親・弟との三人の食事だが、「コラッ!」という怒声とともに母親の頭に「角」が書き込まれている。
食事風景画④
食事メニューとして食卓に「カレー、うな丼、サラダ」が描かれている。
食事風景画⑤
食卓を囲む姿の中に、本人・母親・兄弟の姿はあるが父親の姿がない。「出張中」との書き込みがあり、存在を暗示している。食事をしている家族の顔も楽しそうな表情をしている。
【解説】
①②の絵からは一人で食事する「孤食」の様子が窺える。そのため、描かれる表情も楽しそうではない。
③の絵からは、食事中に母親が怒っている様子が窺える。一緒に描かれていることから、普段から子どもたちと一緒に食事を摂るようにしている素敵な母親と思われるが、怒られながら食べる食事を、きっと子どもは「美味しくない」と感じているだろう。
①②③ともに朝食の風景画だが、どの絵にも時計が描かれており、時間を気にしながら食事をしている様子が窺える。
④の絵からは、家族が同じ食卓を囲みながらも、それぞれがバラバラのものを食べる「個食」の様子が窺える。
⑤の絵からは、出張のためにその場にはいない父親を、心に思いながら食事をしている子どもの様子が窺える。このことから、両親が普段から子どもを大切にしており、また、子どもの方でも親の気持ちに応えようとする、家族間の良好な関係を垣間見ることができる。
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食事風景画から、食事を通して人間関係が築かれていることが分かる。食卓は、単に食欲を満たすだけの場ではなく、一緒に食事をしながら、表情を見たり言葉を交わすことによって、子どもの様子を知る場ともなる。しかし現代では、ライフスタイルが変化してきたために、孤食や個食など食事の「コ食」化が進み、家族の福祉機能が弱まってきている。そして今後もこの傾向は進んでいくと考えられる。
時代の流れに逆行するかのように「共食」を推し進めることは困難であるが、たとえ一緒に食事を摂れなくても、一言メッセージを書いた手紙を食卓に残すことなどにより、心理的な繋がりを子どもが感じられれば、⑤の絵のような笑顔に包まれた関係を築くことができる。
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「食べることは本来的には楽しいことのはず」、そして、「家族や周りの大人たちが『食べることは楽しい』ということを、子どもにも伝えることが大切」と先生は強調されていました。
子どもに伝えることで、子どもは自分に向けられる思いを感じとり、自分を肯定的に捉えられるようになるのではないでしょうか。
そのためにも、先ずは大人自身が食事を「楽しむ」ことが大切です。皆さんは、食事を楽しんでいますか???