講座「障がいを超えた子どもとの関わり方」報告 ~その②~【育成センター】
遅くなりましたが、報告の続きです。
2回目の今回は、実際の講義内容の前半部分についてご報告します。
前半では、「発達障がいの理解」ということで、特別支援教育の現在の状況や、障がいのある子が経験している困難さなどについて、横浜市教育委員会の冢田 三枝子(つかだ みえこ)先生にお話しいただきました。
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<特別支援教育の現況>
- 特別支援に関わる就学・教育相談件数が年々増加している。中でも、一般学級に通えるが配慮の必要な子に関する相談が増加している。
- 児童生徒数としても、個別支援学級に通う子が大幅に増加している。個別支援学級に通う子たちの中には、知的障がいではなく、行動面で周囲の子たちとなじめない発達障がいの子たちもいる。
「なぜ発達障がい児が増えているの?」と思う方もいるかもしれませんが、周囲に対して「発達障がい」であることを公表しやすい環境になったことが、統計上の増加に反映しているそうです。発達障がいに対する理解が進んできたということかもしれませんね!
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<知的障がいについて>
経験している困難 )
- 名前を「ちゃん」づけで呼ばれるなど、年齢に関わらず年少者に対するように接せられてしまう。
- 「~して」、「~やって」などと、周囲から指示されるばかりで、本人がどうしたいかを聞いてもらえない。
- 周囲の話が解らない、また、解らないことを伝えられない。
子どもへの対応 )
- 生活年齢に合った対応をする。そうすることによって、本人の能力も伸びる。
- 能力が伸びないわけではなく、周囲の子どもたちよりはゆっくりと伸びている。本人の能力を伸ばすためにも、本人の意思を聞きながら自身で取り組んでもらう。
- 言葉だけでなく、表情や仕種から伝わる・感じられることもあるはずなので、子どもを理解しようと努める。
<学習障がい(LD)について>
経験している困難 )
- 全般的な知的発達に遅れがあるわけではないため、周りから理解してもらえず、「努力が足りない」、「さぼっている」と思われてしまう。また、できないことやそれを責められることによって、自身に対して否定的になってしまう。
子どもへの対応 )
- 困っている場面では、すぐに子どもの替わりにやってしまうのではなく、「どうしたの」といった声掛けをする。それによって、困った時は助けてもらえば良いことや、困っていることをどのように伝えたらよいかを学習するようになる。
<ADHDについて>
経験している困難 )
- 注意力が持続せず、話をきいていられないために、何度も同じ失敗を繰り返してしまう。
- ルール違反が多く、注意や叱責を受けることも多いため、友達からの評価が低い。
子どもへの対応 )
- 話をする場合は、名前を呼ぶなどして注意を惹きつけてから行う。また、時間を短く区切り、簡潔に話す。
- 守れそうなルールを設定し、定着を図るとともに、やる気を育む。また、良いところをみつけて言葉にして伝えるようにし、人前では叱らない。
<自閉症について>
経験している困難 )
- 字義通りの理解、勘違いが多く、他人の感情や場の雰囲気に気づきにくい。
- 興味・関心の範囲が狭く、こだわりが強いため、周囲からわがままな性格と受け取られやすく、いじめやからかいの対象になりやすい。
子どもへの対応 )
- 場面に合った言葉の使い方を教える。すぐには身につかないかもしれないが、適切な対応を繰り返すことで身につきやすくなる。
- 自閉症の子は、独特の世界観があり独自の理解をするので、文化が違うと捉えた方が良い。但し、周囲の子どもたちにそれを理解してもらうのは難しいので、スタッフが子どもの良い面を見つけ出して、他の子どもに伝えてあげると良い。
「子どもを理解しようと努める」、「良いところをみつけて言葉にして伝える」、「人前で叱らない」・・・など、子どもへの対応のポイントは、障がいのあるなしに関わらないようです。ただ、障がいのある子は、周りの子に比べて理解されにくい場合が多いので、これらの行動をより意識的に行うことが大切なのでしょうね。
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突然ですが、ここでクイズです!
「りんご」にあって「メロン」にないもの 「いちご」にあって「スイカ」にないもの 「バナナ」にあって「もも」にないもの 「バイク」にあって「電車」にないもの
さて何でしょう???
これは実際に講義の中で、冢田先生から参加者全員に対して出されたクイズです。答えの解った人から順番に座ることができます。
時間とともに答えの解った人が増えていき、解らない人はいつまでも座ることができずに周囲から取り残された気分になります。
実は、この「周囲から取り残された気分」というのがキーポイントで、障がいのある子が感じている気分でもあります。
今回の講座では、このようにクイズなどを交えながら障がいのある子の気持ちを体験的に理解していきました。