【報告】子ども・若者を支えるスタッフのための「記録のとり方」入門研修
「記録」とは、“何のために”書くのか―――。
元ユースワーカーでもある杉野 聖子先生(江戸川大学総合福祉専門学校)を迎え、3月6日(火)に実施された『記録のとり方 入門研修』は、こうしたテーマに沿ってすすみました。
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施設(実践現場)や活動の多くは、複数のスタッフが交替で勤務しています。私たちは、記録を頼りに「自分が勤務していない日にどんなことがあったのか」を知り、そして記録に「自分が見たこと、聴いたこと、その日にあったこと」を、自分以外のスタッフに残します。
でも・・・・・・、これがなかなか難しいのですよね!
私もかつて実践現場にいた頃は、記録することの重要性は分かっているのだけど、「忙しくて」「何て書いていいかわからない」などと、なかなか書けなかったことを思い出します。
杉野先生は、こうした記録にまつわる課題は、チーム内で”記録が必要という共通意識”がされてないことが要因である と指摘しています。
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講義で出たポイントをいくつか説明します。
- 記録を取ることは、「業務である」ということを認識する
- 活用されなければ、書かれない (書く動機づけが起こらない)
これは、現在携わる業務および活動は 何を目的にやっているか ということを考えれば、おのずと答えが出てきます。「書けない」ではなく「書かなければいけない」という認識に立たなければなりません。
活用の実態はどうでしょうか。組織で、そして自分の振り返りとしてなど、さまざまな活用目的があります。主な点として以下のことが考えられます。
【記録のおもな活用目的】
- 利用者のサービスを適切にするための援助
- この責任を果たすうえでの検討と評価を行うための管理
- 知識の交換と技術の向上を図るための教育・指導
- 新知識を発見し、社会計画や社会予防に資するための調査
自分たちの業務(活動)が、何を「目的」としたもので、そのために記録をどのように活用していくかを確認したうえで、記録の「種類(日誌、メモ形式、相談シートetc・・・)」「様式」を決めていきます。
講義では、実際に使われている記録(下写真)を例にとり、書き方のポイントが説明されました。例えば、ある施設での<相談受付カード>は、種類は「フェイスシート」、目的は「統計処理」「概要把握」でした。
いよいよ、記録の「とり方」のポイントです。
- 事実と所感を分けて書く
既存の記録を読み直してみると、事実と所感がごちゃ混ぜになっていることがよくあります。
- 事実は、ありのままに書く 。できるだけ客観的に記す。 (例 : 新聞)
- 主観を客観化すること
書き手が、「なぜそのように見えたか」「なぜそのように感じたか」まで分析することがカギです。そのためには深い観察力が必要です。
そして、「なんとなく」という言葉は使わず、主観は「I(アイ)メッセージ」で示します。 先生が分かりやすい例をあげてくれました。
× 「A君はその時悲しそうな顔に見えた」 → なぜ、そう見えたのでしょう?なんとなく?
◎ 「A君はその時、目をわざと私と合わさないようにして、うつむき加減になって、しばらく黙りこくってしまった。少しすると遠くに目をやった姿が、悲しそうな表情に私には見えた」 → 「私」がそう見えたのは、こういう”理由(=要因)”があったからです(Iメッセージ)。
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私たちは、何のためにこの業務(活動)をしているか。
そこを改めて見直し、スタッフ間で話し合い、より良い記録のあり方について考えていきたいと思います。
最後に、杉野先生は「子ども・若者に関わる現場にとって、日々の記録は、援助を考えるうえで重要な意味を持ちます。なぜなら、彼らは日々めくるめく成長と変化を遂げている存在だからです。細かな変化に気づき、それを残していくことは、私たちの業務において求められる重要なスキルです」
と結びました。(N)
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*参加者の感想です。新年度に向け、「今のままでいい?」と見直すところから始めたいですね。(アンケートから抜粋)
- 自分の仕事は何のためにあるのか・・・を改めて意識すること、自覚することが大切であることがわかったので、しっかり意識したい
- 何のために記録をとるのかを、はっきりと理解することがすべての記録の一歩で、そのふり返りも含めて、スタッフの情報共有に役立てたい
- 記録を残す目的が理解できた
- 今以上に“子どものために”の意識が高まった。そのことを日誌に書いていきたい。
- 仕事に対しての目的をしっかり自覚し、利用者にとって役立てる記録を残せる様な日誌作りを他のスタッフとも協力して作成していきたい