【報告】シンポジウム「震災と子ども・若者のこれから」<その2~誰もが“当事者”になった~>
あっという間に12月になりました。12月に入ると、急にバタバタするのはなぜでしょう?
この報告の第2弾も、(バタバタして)すっかり遅くなってしまいました…。
2011年、それぞれ色々なことがあったかと思いますが、やはり3月の東日本大震災は私たちの生活に少なからず変化をもたらしたのではないでしょうか?
そして、生活の大部分を占めることも多い『働くこと』について、見つめ直した人も多いのではないでしょうか。
先の見えない社会情勢。若者の就労を取り巻く環境は、ますます悪化していると言われています。
シンポジウムで報告者の岩永牧人さんは「リーマンショックで『今まで働けていた人たちが働けなくなった』。そしてこの震災で“トドメ”を刺されたように感じる」と言っていました。
報告その2では、若者の就労支援をおこなっているNPO法人ユースポート横濱理事長 岩永牧人さんの報告を紹介します。
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震災による“トドメ”を岩永さんが実感したのは、仕事だけでなく同時に住まいを失った人の相談が、この横浜でも多くなったことによります。
岩永さんは、3月11日、仕事の打合せで東京にいました。交通網のストップにより数時間かけて帰宅する途中、同じ方向に向かって歩いている見ず知らずの人たちと「大変なことになりましたね」と自然に声がかけ合えたそうです。
なぜ、「声をかけあう」「気をつかう(助け合う」雰囲気が生まれのでしょうか。
岩永さんは「誰もが当事者になったから」だと言いました。
被害の程度や感じ方はそれぞれですが、この震災を誰もが体験したこと。そして、誰もが「明日のことは分からない」という気持ちになったこと。そんなことが、自然と声をかけ合うことにつながったのかもしれない、ということです。
それは『働くこと』にしても同様で、今までは「仕事を失う人はごく一部の人」「仕事をしていない人は問題があるのではないか」という意識が少なからず社会の中にあったのが、「自分もいつ同じような状況になってもおかしくないんだ」という風に、この震災をきっかけにして多くの人が捉えるようになったのではないか。そして今後は、就職することが目標なのではなく、“安心して生活できること”になっていくのではないかと加えました。
岩永さんは、これからの大切なこととして「他人事としてではなく、当事者として社会の問題を捉えること」「互いを気にかけ合うこと」の2つを挙げました。
そして最後に、自分の今後の役割について、新聞の寄稿記事にヒントを得た言葉として次のように結びました。
「この震災により各々の”ストーリー”がより複雑化し、これまでとは別のかたちでこの”ストーリーを語りなおす”ことが必要になってくる。語りなおす作業は苦しいが、そのことで苦しみへの関係性が変わってくる。その語りなおしのプロセスに耳を傾けていくことが、これからの自分の役割だと思います」―――。
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「“関係ないと思っていた”問題は、実は、少しのタイミングで自分自身の問題になっていたのかもしれない」。周りを見渡すと、このようなことがたくさんあるような気がします。
復興のこと、そして子ども・若者をめぐるさまざまな課題に対し、いま一度、アンテナを張り巡らし、周りの人の声に耳を傾けながら、逃げずに考え・捉えていこうと気持ちを引き締めました。 (N)