募集・お知らせ

  • 掲載日:2021年2月26日
  • 掲載者:事業課

【開催報告】 「成人年齢引き下げに関する勉強会vol.2」を開催しました!(12/22)

開催報告】「成人年齢引き下げに関する勉強会vol.2 18歳成人社会を考える」を開催しました!(12/22)

 

2020年12月22日(火)、(独)国立青少年教育振興機構の両角達平(もろずみ・たつへい)先生にお越しいただき、
「成人年齢引き下げに関する勉強会vol.2 18歳成人社会を考える」を開催しました。
一週前の勉強会(※1)に引き続き、教育関係者やNPO法人職員など、13名が参加してくださいました。

 

※1 高橋温先生(新横浜法律事務所)の勉強会の様子はこちら
https://yokohama-youth.jp/blog/2020/12/25/report_benkyokai_vol2_0216/

 

この「勉強会」は、よこはまユースが調査・研究事業の一環として開催しているものです。
2月に実施した会に引き続き、民法改正により2022年に「成人」が20歳から18歳に引き下げられることを受け、
「成人年齢の引き下げ」をテーマとして取り上げています。
(正確には「成年年齢」ですが、一般的に「成人年齢」という呼び方が定着しているため、今回はそちらを採用しています)

講師の両角先生は、(独)国立青少年教育振興機構青少年教育研究センターの研究員であり、主にスウェーデンを対象に、
若者政策やユースワークについて研究されています。

今回の勉強会では、ユースワークを理解するための基盤となる欧州若者政策についてと、
スウェーデンにおける余暇を主軸にしたユースワークについて、幅広くご講義をいただきました。

  

講義の要点を、以下にまとめました。

 

「ユースワークと18歳成人社会」

欧州における若者政策とユースワークについて

■ ヨーロッパにおける若者政策の基準 (“A Toolkit on Quality Standards for Youth Policy”より)
・ ①人権基盤型アプローチ/②エビデンスに基づいている/③参画型/④多層性
⑤戦略的/⑥十分な投資/⑦コミットメントとアカウンタビリティの所在/⑧領域横断的

・ 重要であるのは、人権基盤型アプローチ(Human Rights-Based Approach)であるか。
(若者の権利が概念として認識されているか)

■ ヨーロッパの若者政策とユースワークの特徴
・ 学校教育とは異なるものであり、「余暇」の充実が主。
・ ユースワークが若者政策を担う「主役」である。
→ そのために社会的認知度、専門性を高め財源の確保がされている。

・ ユースワークの実践者と研究者、政策決定者、若者当事者(若者団体)が政策形成にかかわる。
・ 施設のみならず、若者団体(Youth Organizations)も基盤にある。

■ ヨーロッパにおけるユースワーク
・ ユースワークの発祥は、イギリス。
・ YMCA、スカウト運動、セツルメント運動などの青少年運動(Youth Movement、Youth Organization)から広がった。

・ こういった動きが各地へと広まったとも説明できるが、各国で起こっていたユースワーク的な取り組みが、
いま、ユースワークという概念にまとまりつつあるとの見方もできるだろう。

■ ユースワーク(Youth Work)とは?
・ 用語としての意味
→ 思春期以降の子ども・若者に関わる活動の総称(田中治彦)
→ ユースワークは、グループあるいは一人ひとりの若者のための、
若者による若者と共に行う、社会、文化、教育、環境、政治など様々な活動に及ぶ広義の用語
(Council of Europe,2017)

→ 欧州では、若者と共に行う実践であるという文脈が強い。

■ ユースワークの目的は?
・ (若者が)一歩を踏み出すために不可欠な知識、スキル、価値、心構えを身につけ、自信を得る。
(Council of Europe,2017)

・ 若者が自身の人生に前向きな道筋をみつけ、追求することを動機づけ、サポートし、
それにより個人と社会全体の発展に寄与する。(Council of Europe,2017)

 

スウェーデンとユースワークについて

■ 法定年齢
・ 成年年齢と結婚年齢 : 18歳
・ 刑事責任 : 15歳
・ 選挙と被選挙 : 18歳
→ すなわち、18歳以上で国会議員になることができ、実際に選出されている。

■ 投票だけではなく社会参加への意識も高い
・ 住んでいる地域の、自分自身に関連のある問題に影響を与えたいと思っている16~25歳の若者の割合 :6%

・ 若い国会議員の割合(2014年)
→ 30歳未満の割合:約10%(最年少は22歳)
→ 30歳未満の大臣も誕生している。

→ 現在の日本の国会において、30歳未満の議員はいない。

・ Democraticという言葉が飛び交い、グレタ・トゥンベリさんに代表されるように、若者の政治参加率が非常に高い。
・ スウェーデンの投票率の平均は、(2018年の総選挙で)18%。その中で、若い世代(18~24歳)の投票率は84.9%。

→ OECDの中で、義務投票ではないが投票率が最も高い国。

■ 学校教育の特徴
・ 学費がかからない。
→ 機会が平等にあり、家庭の状況によって子どもの人生が左右されない。

・ 高校卒業後、すぐに大学進学する若者の割合 :7%
→ 日本とは移行期が大きく異なり、大学入学者の平均年齢は24歳(日本は18歳)

・ 学校における生徒の民主主義の参画の機会
→ 民主主義を価値としてだけではなく、実践する機会も含めて教える。
→ 学校内の様々な委員会(給食委員会/学級会/生徒会)
→ 模擬選挙や討論会が学校内で実施され、政治家や政党青年部に所属している若者が学校に招かれる。

■ ユースセンター、余暇センターの概要
・ 20世紀初頭、セツルメント運動として設立されたものが広がる。
・ 13~25歳を対象としているが、施設によって対象年齢は異なる。
・ 全国290の自治体に1500施設。
・ 職員は、資格を持った専門職。 → 余暇リーダー/社会教育者/ボランティア、インターン、パート

■ スウェーデンのユースワークを構成する3つの要素
・ 教育でも就労でもなく若者の余暇の活動であるということ
→ スウェーデンの若者政策の五つの分野(就労、健康、余暇、学校教育、影響力)を見ると、
教育や就労とは異なるものとして余暇が位置づけられている。
→ スウェーデン若者・市民社会庁が「若者にとっての余暇」を「学校および就労以外の時間」と定義。

・ 施設利用よりも若者の集団による民主的な活動
→ 12~15歳の約7割が地域のクラブ活動や協会活動に週1回の頻度で参加。
→ 12~15歳の約2割がボーイスカウト、ガールスカウト、劇活動、音楽活動、聖歌隊などの活動に参加。
→ 16~24歳の58%、25~29歳の70%が、少なくとも1つの若者団体に属している。

→ 若者団体とは、
若者にとってのプラットフォームであり、若者の、若者のための出会い・交流の場であり、社会と市民社会にとって重要な一部である。

・ オープンレジャーアクティビティ(OLA)であること
→ スウェーデンで開発された方法論であり、3つの要素から成る。
①開放性
会員証の撤廃、利用料の無償化

②自由性
招待型の活動ではなく、プロジェクト型の活動(若者のやりたいことが、そのまま活動になっていく)
施設運営にも参画

③無目的性
無目的の若者が集まれる空間(ロビー)が重要であり、当然そこには目的のある若者も集まることができる
→ このような、誰もが集まれる空間づくりが重要

■ 18歳成人社会を迎えるうえでのユースワークの役割

・ 年齢で区切ることの限界
→ 子どもから大人への移行期としての若者→ 年齢主義は差別的なものであり、年齢の議論はそれを助長しかねない。
(スウェーデンでは、差別を禁ずる項目に年齢が含まれる)

・ 若者の多様性を年齢以外のどこに見出すか
→ 移行期における経済的格差、チャンスの不平等の少なさ
→ 年齢主義が弱く、移行期が長く多様で不安定だけど自由なスウェーデン

・ ユースワークは若者期のどこをフィールドとするか。
→ スウェーデンでは、明確に「若者の余暇」と「学校、就労」は異なる。

 

講義内容を受けて、会場では以下のようなやり取りがありました。

Q. ユースワークにおける対象年齢は?

そもそも若者政策の対象年齢が国によっても異なる。
例えばスウェーデンは、13~25歳を主な対象としているが、年齢によって区分けできるわけではなく、
若者の年齢期の定義は絶えず変化していくものであるという立場を取っている。

(若者政策が対象とするのは、)未成年から成年になる移行期であるが、
そもそも成年(すなわち大人)という概念自体がしっかりしているわけではない。

世界的な潮流も、明確に区切れるわけではないという立場が主流といえるだろう。

日本の若者政策およびユースワークにおいても同様であり、年齢はあくまで目安として捉えることが適切だろう。

Q. 高校生に関わっていると、学校やアルバイト、塾といった義務的なことは溢れているが、余暇はない。
余暇を手渡されても過ごし方が分からない子もいるだろうし、だからこそ、施策として余暇の保障は必要だと感じた。

また、成人年齢の引き下げにおいても、自分で決めて自分でやっていくということであり、
やれるかどうかを決めていくということなのだろうと感じた。

「やれる」と信じるしかなく、「できない」という姿勢だと、若者政策は保護や非行対策になってしまう。
そのような考え方もある一方で、社会は変化しており、現にスウェーデンで成り立っていることは、日本でも成り立ちうるだろう。

スウェーデンの若者政策では、「若者は社会の問題ではなく社会のリソース(資源)」という認識があり、
この視点に立つと、保護的な文脈は薄れていくだろう。

 

そのほか、アンケートでは、
「ユースワークとは何か、具体的な内容や成果(社会への影響)を知ることができた」
「若者が社会に関わるきっかけが増える一方で、若者が自分の意見を持ったり社会に関心を持って発言したりできる
きっかけづくりが必要と感じました」
といったご感想をいただきました。

お集まりいただいた皆様、ありがとうございました。

 

以下、両角先生の講義の参考にリンクを掲載しましたので、ご活用ください。

 

 

【参考】

・両角達平, 「ブログ」, Tatsumaru Times,
<https://tatsumarutimes.com/>
(参照日2021年1月18日)

・The European Youth Forum, “A Toolkit on Quality Standards for Youth Policy”, European Youth Forum ホームページ,
<https://www.youthforum.org/toolkit-quality-standards-youth-policy>
(参照日2021年1月18日)

・The International Youth Foundation, “The Global Youth Wellbeing Index”, International Youth Foundation ホームページ,
<https://www.youthindex.org/>
(参照日2021年1月18日)

・静岡県立大学, 「若者と若者政策:スウェーデンの視点」, 静岡県立大学・短期大学部機関リポジトリ,
<https://u-shizuoka-ken.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1343&item_no=1&page_id=13&block_id=21
(参照日2021年1月18日)

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