【開催報告】 「成人年齢引き下げに関する勉強会vol.2」を開催しました!(12/16)
【開催報告】「成人年齢引き下げに関する勉強会vol.2 18歳成人社会を考える」を開催しました!(12/16)
2020年12月16日(火)、新横浜法律事務所の高橋温(たかはし・あつし)先生にお越しいただき、
「成人年齢引き下げに関する勉強会vol.2 18歳成人社会を考える」を開催しました。
今回は、教育関係者や青少年育成に関わる団体スタッフなど、11名が参加してくださいました。
この「勉強会」は、よこはまユースが調査・研究事業の一環として開催しているものです。
2月に実施した会に引き続き、民法改正により2022年に「成人」が20歳から18歳に引き下げられることを受け、
「成人年齢の引き下げ」をテーマとして取り上げています。
(正確には「成年年齢」ですが、一般的に「成人年齢」という呼び方が定着しているため、今回はそちらを採用しています)
講師の高橋先生は、新横浜法律事務所の弁護士であり、NPO法人子どもセンターてんぽの事務局長でもあります。
今回の勉強会では、弁護士と子どもセンターてんぽの取り組みの二つの視点から、
成人年齢引き下げによって引き起こされる変化とその影響について、さらに、そのような変化の中で、
子どもたちと関わる私たちにはどのような動きが求められるのか、幅広くご講義をいただきました。
講義の要点を、以下にまとめました。
「子どもの自立支援と18歳成人社会」
■ 今回(2022年)の民法改正について
・ 成年年齢が20歳から18歳へ引き下げ(民法第4条)
・ 女子の婚姻可能年齢が16歳から18歳へ引き上げ(民法第731条)
■ 成年年齢の持つ意味について
・ 行為能力の制限(民法第5条)がなくなる。
→ すなわち、自分だけで契約できる。
・ 親権が外れる。(身上監護権と財産管理権が外れる)
→ すなわち、自分で決められる。
■ 成年年齢引き下げに関連する他の法律について
※ 以下は、特に今回のテーマに関連するものを抜粋しています。
・ 20歳から18歳に変わり、法改正が必要なもの
→ 帰化の要件(国際法)
→ 性別の取扱いの変更の審判(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)
・ 20歳から18歳に変わり、法改正が不要なもの
→ 分籍(戸籍法)
・ 現行の児童福祉制度から変わるもの
→ 親権停止・親権喪失の請求や未成年後見人選任/解任の請求は、18歳になると親権が外れることから対象でなくなる。
■ 考えられるよい影響
・ 進学、就職、結婚などの人生の選択を本人が決められる時期が早くなる。
→ 本人の自己決定権が尊重される。
・ 児童福祉に関わらない子どもでも携帯電話の契約が18歳で可能になる。
・ クレジットカードが作れるようになるので、カードが無いと使えないサービスが使えるようになる。
■ 懸念されること
・ 親の支援が18歳で切られる可能性がある。
→ 自己責任論との結びつきの懸念
・ 消費者被害
→ 18歳成年の判断能力に付け込まれる懸念(成年として被害を受けてしまう)
・ 親の経済的搾取
→ クレジットカード等による搾取の懸念
■ 変わらないこと
・ 親権者の同意が不要になっても保証人が必要な状況は変わらない。
→ 就職時の身元保証人、入院時の保証人など。
・ 建物賃貸借契約時の家賃保証会社がどうなるか。
→ 現状は親権者の同意が必須だが、これが外れるだけか、その代わりに保証人を求められるか。
■ 保護する際の法的問題
・ 未成年者が保護を求めてきたとき保護に親権者の同意は必要か。
→ 親権者が子どもの福祉に反する養育をしている場合には必要ない。(児童相談所運営指針)
■ 自立支援で抱える法的問題
・ 住所・身分証明/住居/就労/契約など/生活保護/法的手段
→ 15歳を超えていれば住民票の移動を本人が行うことができ、支援措置により住民票の写し等の交付を制限できる。
(親権者等に転居先を知られない)
→ 身元保証人確保対策事業は児童福祉を経ないと使えない。
→ 訪問介護のような「暮らし」そのものを支援する制度がない。
(食事、買い物、掃除洗濯といった個別の支援メニューがない)
→ 生活保護は他法優先の原則のため、18歳未満の適用が難しい場合がある。
■ 子どもの自立支援に必要な視点と配慮すべきこと
・ 長期間の継続した虐待の影響
・ 自立をサポートしてくれるはずの家族や親族がいない
・ 親等が自立を阻害する
・ どうすればエンパワメントできるか
→ 本人が納得した選択を支援
→ 大人社会を信じて、社会と関わって生きていこうと思える支援
→ 教え諭すことよりも、一緒に悩んで一緒に解決していく支援
■ 若者政策の提案
・ 学び : 学校教育の改革とオルタナティブな学びの場
→ 「生きていくための」力をつける学校教育へ
→ オルタナティブな学びの場とコミュニティ
→ 同質性が意識される社会の中で、オルタナティブな場をいかにしてつくっていくか。
・ つなぐ : 若者の社会参加を支える仕組み
→ 学校から社会へのつなぎを強化する
→ ユースセンターとユースパーソナルサポーターの設置・常設
→ 本人の気持ちを引き出すような、円滑な仕組みをいかにしてつくっていくか。
→ 時間軸も含めた継続的、総合的な関わりが必要性。
・ 生活支援 : 若者が生きていく生活基盤づくり
→ 福祉と就労の一体化、家族支援との一体化
→ 働くことと、心身・生活を保つことを両立することが難しい現状。
・ 出口 : 働く場・多様な働き方を増やす
→ 中間的就労事業の育成
高橋先生のお話を受けて、後半では参加者の方との質疑応答の時間とし、以下のようなやり取りがありました。
Q. (成年年齢の引き下げ後、)18歳でクレジットによる購入を誤ってした場合、その取り消しは難しくなるのか。
まず、購入してしまった理由が問われるだろう。出会い系のように、
騙されているということまで証明できれば取り消せる可能性はあるが、その証明をすることは非常に難しい。
また、一度起きてしまった場合、次をどうするかという問題もあるが、大人と同じ対応をするのであれば、
信用情報機関に本人が申し出をして、クレジットを組めなくすることは可能。
ただし、(大人と同様に)本人がその自覚を持つことは難しいだろう。
本人の能力による問題の場合、成年後見の保佐(民法第11条)の制度の活用により、
現実の利用を制限することは考えられる。
Q. 子どものオンラインゲームでの課金があり、親がクレジットの手続きをすれば制限できるが、
親にその知識がなく制限できていない。この場合、親の責任となってしまうのか。
初回であれば、子どもによるものとして返金できる可能性があるが、
繰り返し起こっている途中であれば、親の自己責任となる可能性があるだろう。
理想は、親と一緒に設定することまで支援できる人材の確保だが、
支援者自身がそういったことに不慣れなことにも問題はあるだろう。
また、企業も適正な取引をしたいと思っているため、そういった企業のサポートとつなげることも、
支援者には求められるだろう。
そのほか、アンケートでは、
「法律の仕組みや留意点を知る機会となった」
「(成年年齢の引き下げ後、)変わること変わらないことがあることを意識して必要な支援に活かしていきたい」
といったご感想をいただきました。
お集まりいただいた皆様、ありがとうございました。
以下、高橋先生の講義の参考にリンクを掲載しましたので、ご活用ください。
【参考】
・子どもセンターてんぽ,「トップページ」, 子どもセンターてんぽホームページ,
<http://tempo-kanagawa.org/>
(参照日2020年12月18日)
・総務省行政管理局,「民法」, e-Govポータル,
<https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20200401_501AC0000000034&keyword=%E6%B0%91%E6%B3%95>
(参照日2020年12月18日)
・厚生労働省,「児童相談所運営指針」,厚生労働省ホームページ,
<https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv11/01.html>
(参照日2020年12月18日)
・総務省,「配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、
申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。」,総務省ホームページ,
<https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.html>
(参照日2020年12月18日)
・全国社会福祉協議会,「身元保証人確保対策事業 利用の手引」,全国社会福祉協議会ホームページ,
<https://www.shakyo.or.jp/news/kako/materials/20170831_mimoto.html>
(参照日2020年12月18日)
・ビッグイシュー基金,「発行物・レポート」,ビッグイシュー基金ホームページ,
<https://bigissue.or.jp/action/issue/>
(参照日2020年12月18日)